思い切って宙返りしてみよう

「剣の上を渡るとき 氷の上を行くときは。
 そぞろ歩きをあきらめて いっそヒラリと宙返り」

『無門関』西村恵信訳注 岩波文庫

この頌に出会ったのは茨城県は八郷、横田観風先生のもとに通っていた時のことです。

絶体絶命の状況を突き付けて、人生ギリギリの覚悟を引き出すようなはたらきが、禅の公案にはあるのですが、まさにこの頌も、修羅場感満載です。
禅の公案では例えば、AとBがあってどちらかを撰べとか言われたりするんですが、そこでうっかりAと答えてもだめ。Bと答えてもダメで、じゃあCならというと、それもだめ。裏をかいて、「AでもBでもCでもない」と答えてもダメ。基本、全否定なのですが、そこからなんですね。困りました。さぁ、僕なら、貴方ならどうするか・・・。

「絶体絶命」といえば山口百恵さんに同名の歌がありました。

「別れてほしいの彼と、そんな事はできないわ
 ~三人模様の絶体絶命 
 さぁさぁさぁ はっきりカタをつけてよ」

・・・という、男女間のもつれですね。修羅場感満載です。

この「さぁさぁさぁ はっきりカタをつけてよ」というあたりが、禅師に胸倉掴まれて、「さぁさぁさぁ どうする!言え!いえ!」と迫られている感じと重なります。

今はなにか困ったことがあれば、インターネットで調べるという便利な手段があります。大抵のことなら、なんでも書いてあります。しかし、そうしてかき集めた知識でやり過ごせるような、生易しい場面ばかりではありません。

「剣の上を、氷の上を素足で渡る」と、無傷では済みません。
足はすくみ、力が入り、足は汗と血で滲む。。。

そんな状況にあって。

「そこで、バック転しなされ。」

というのが、この頌なのです。

いやはや、殺生な・・・・

後になって思えば、取るに足らないような小さな出来事であったとしても、当事者本人にとっては一大事です。次に僕が追い詰められた時には、山口百恵さんの『絶体絶命』を口遊みながら、思い切ってバック転してみたいと思います。

そんなこんなで、僕の好きな頌のひとつです。

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