記憶に残る仕事



麹屋大観さんが閉店されてしまった。

もうあのすばらしいパンを口にすることはできません。
本当に美味しいパンを作って下さる方でした。
なんでも、ご主人がご逝去されてのことだと・・・。残念でなりません。

誠花堂の利用者さんたち。特にアトピーなど皮膚に疾患がある方には必ずお勧めしてきたパン屋さんです。以前、ダンディズムについて書いたことがありますが、まさにそのダンディズムを体現したような尊敬に値する、素晴らしい職人さんでした。私たちが失ってしまったものを、どうか知ってください。

大量生産ができないがために、ごく一部を除いては、大手スーパーに並ぶことはありませんでした。なので、ほとんどの方はその存在を知る事もなかったと思います。

実は、私河原は以前、大観さんの近所に住んでいました。美味しいパンを子供と抱えて帰るというのが楽しみのひとつでした。非常に親切にして頂いた記憶があります。

店内も、とくに華やかな装飾がある訳でもないのですが、代りに本当にいいパンを作り続けている。それが印象です。

「子どもたちに、本当にいいものを食べさせたい」
一生懸命にパンについてお話されていた姿が忘れられません。いつも、少年のような眼で楽しそうに、でも真剣に語ってくださった。
その姿勢に感銘を受けたのは、私だけではないでしょう。

あの素晴らしいパンを作るために、途方もない工夫と努力があったはずです。
いいものを私たちに提供するために、人知れず、想像できないほどの苦労をして下さっていたのだと思います。

そういう部分は見えない。その見えない部分に「ありがとう」をいいたいし、言ってきたつもりです。でも、もっともっと、伝えておきたかった。

一度でも大観さんへ足を運び、言葉を交わし、パンを口にされた方の記憶の中には、ご主人の姿と共にパンの記憶は残り続けるのではないかと思うのです。

ひとつのパンを通じて、世の一隅を照らされていた方だと思います。
そういう関わり方をされていたパン屋さんでした。
そういうお店が、街角から消えていくのが悲しい。
そういう職人が消えていく事が惜しい。
大いなる損失だと思います。

あの素晴らしいパンを、もっと多くの人に知ってもらいたかった。
私たちは、本当に惜しい方を失くしてしまいました。

ただただ此処に、ご冥福をお祈りします。

同じ職人として、忘れることはないでしょう。

誠花堂も、人々から愛される職人でありたい。
記憶に残る仕事をしていきたい。そう思います。

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