台北医書探求録

台湾

序 「あなたが探しているものは、すべて此処にある」

3月の台北市内は、やや蒸し暑かった。だが、冷えたタピオカミルクティー片手にぶらつくには調度いい。今日は台湾滞在の最終日だ。
温州通りに入ったら南天書店を経て、そのまま旧市街を抜けよう。ガジュマル、菩提樹、南方の草花が旧市街を彩っている。100年の昔に時が止まったままのようだ。隣接するモダンなカフェとの激しい断絶はそのままに、過去と未来が同居していた。

いつの間にか道に迷ったらしい。向かいに古書店がみえる。あそこで最後にしよう。ついでに道も尋ねればいい。

奥には店のヌシがいた。白髪に黒縁の眼鏡。洒脱な老紳士だ。店内を一周し終えると、気さくに話しかけてくれた。たぶん、「何をお探しですか?」だろう。「鄭曼青」と書いたメモを差し出した。

「Zhèng màn qīng」和らかな笑みがこぼれる。ああ、よく分かるよといった様子だが、どうやらここには無いらしい。中国医学の本もあるなら見たい。

「我想找中醫的本」
中国医学の本を探しています ーだが、通じない。勉強してくればよかった。

台湾書店


「あ、僕が通訳しますよ」と日本からの留学生が、通訳に入ってくれた。僕そっちのけで「あーじゃない、こーじゃない」と白熱する。有り難い。なんて親切なんだ。
「いや~この辺は文学系、社会学系の書籍が多いんですよ~」と留学生がいう。
「医学書がみたいんだったら・・・」と再び、ヌシとの応酬に戻る。
ヌシはどこかへ電話をして、なにやら確認を取っている。

やがて、ヌシはメモをくれた。

「興隆路3段…」

どこかの住所のようだ。

「あなたが探しているものは、すべて此処にある。行ってみるといい。」

粋なセリフに、唾を呑み込んだ。
最後に得られた超有力情報。

だが、向かうべき空港とは反対方向だ。どうする。時刻は迫っていた。

「すべてが、此処にある」

そこまで言われたら、行くしかないな。

急いで通りに出ると、タクシーに飛び乗った。黄沙のせいか、空と大地の境界線は滲んでいた。

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(つづく)

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台北書店巡り記録

目的は鍼灸や湯液に関する医学書を集めること。これは自身で調べ、実際に歩き回って得た記録だ。短い滞在時間で、回れたところは多くはない。
台北市内で、医学書を探したいという変人同志のため書き残すことにした。

市内にある重慶南路は、台北随一の書店街らしい。重慶南路と漢口街とが交わるあたりが書店街の入り口で、志遠書店、大方書店がある。ここにいけば東洋医学関連の書籍がたくさんある。どちらも大通り沿いでわかりやすい。日本語は通じない。
僕は足を踏み入れる時間がなかったが、近くには三民網路書局(重南門市)もあった。このあたりから始めたら良いかもしれない。

志遠書店
志遠書店は地下に

志遠書店
新書が多数

台湾書店

大方書店
大方書店

大方書店
大方書店 DVDや経絡人形もある

進源書局
進源書局


日本漢方の本も多く、大塚敬節、矢数道明の翻訳版も多数見かけた。
進源書局にも鍼灸の本はある。内丹、風水、占い関連多い。ただ、周辺の風紀はかなり悪い。
南天書局 はお休みらしく、入れなかった。

三民網路書局
三民網路書局(復北門市)遅くまで開いている。台湾の大型書店。

三民の古籍古今新釋叢書
『資治通鑑』の発刊が記念されていた



三民の古籍古今新釋叢書は素晴らしい。儒仏道に関する有名な古典は網羅されている。岩波文庫、講談社学術文庫に似た構成で読みやすい。

台北医書探求録1コラム①台北の書店巡り記録
台北医書探求録2コラム②二手書巡り
台北医書探求録3コラム③台湾の鍼灸
台北医書探求録4コラム④後記 ⑤MAP