レーザー光凝固術や薬物療法といった、一般的な治療が不適応である場合や6か月を過ぎても回復しないケースがあります。当院ではそういった、いわば難治性の方々が主に来院されています。それでも施術後、徐々に視野・視力を取り戻しておられる様を確認していますので、たとえ治りが悪くとも根気さえがあればできることはまだあります。なにもせずに放置したりひとりで悩んだりせずに、どうぞお気軽にご相談ください。なぜ回復が始まらないのかその疑問にはお応えするには、東洋医学の目線が必要です。西洋医学は病気を見るという点で東洋医学より優れていますが、個人の体質を診る視点はあまりなく、この種の問題に答えることができません。精神的ストレスによる影響は確かに大きく関わりますが、ストレスのある人全員が中心性網膜症を発症する訳ではありません。つまりストレスは一因にすぎず、メカニズムの説明としては不十分です。誠花堂での治療つまり、より複眼的な視点が必要です。誠花堂は鍼灸と漢方、2つの目で病を捉えることで治療をより的確なものとすることができます。またこのことは再発防止に役立ちます。通常、伝統的な鍼灸治療では人体を「経絡」という縦のラインで捉えます。異常のある経絡を探し、その経絡上で異常反応のある「経穴(ツボ)」に針をすれば良いという考えです。つまり「線」と「点」で病を捉えるのが鍼灸の見方です。一方、漢方においては、病気と臓腑との関連、病の深さ、水毒、お血が絡んでいるのかといった視点で病を捉えます。かつ解剖学的な身体の見方が加わります。そういった視点から診察をした後、鍼灸治療に移ります。問題が複数存在するのが普通なので、そこをかみ分けつつ、効果の高いツボを厳選して刺激していきます。中心性網膜症の治療例35歳 男性 会社員 N・Sさん 2015/01発症してから半年の間に3度再発。左目の中心暗点、小視・変視・視力低下。激務がたたり不眠、耳鳴り・難聴も併発。ほか過敏性腸症候群、味覚障害あり。(右目は数年前にクリアファイルで傷つけて以来、湯気にあたると激痛がする)週2回の治療。初回治療後、よく眠れるようになる。2回目の治療後の翌朝、目の見え方に変化。5回目の時点で中心暗点、小視・変視・視力低下といった視野の障害はなくなった。右目の激痛、耳鳴り・難聴・味覚も正常になり治療は終了。その後7年が経ち、たまにメンテナンスとして来院されるが、再発は起きていない。38歳 男性 会社員 I・Nさん 2011/06中心性網膜症の他、潰瘍性大腸炎を合併。ステロイド療法中に視力に異常を感じるようになった。眼科へは1年ほど通院し経過観察中。右目の変視・小視あり。週2回のペースで治療。鍼灸治療を始めてから血便が止んだ。11回目の頃に、すこしづづ見える範囲が広がり、ピントも合いはじめる。 右目からはしきりに涙が出るようになるにつれて回復が進んでいった。 その後は転居にともない横浜の信頼できる鍼灸院を紹介し、誠花堂での治療は終了となった。40代 男性 会社員 Tさん中心性網膜症の他、甲状腺機能亢進症を合併。眼科へ6ヶ月間通ったが経過観察中。回復の兆しが見られないことから来院。左目の小視・変視・視力低下・色変がある。週2回の治療で10診目、見え方が回復し始める。3ヵ月が経過した時点で視力と視野の9割が回復。持病の甲状腺機能亢進症に対する服薬量を減らせた事、適正体重になっていったこと等、全体的な改善もみられた。再発予防として月に1度来院。30代 女性 会社員 U・Kさん冬に中心性網膜症を発症。白内障の傾向もあり。頭痛と肩こり、月経痛が酷い。流産を繰り返し、腹部には瘀血もある。遠方のため週一回の治療。初診後、首肩が軽くなり、あたまがすっきり。「目の疲れ感が少ない」。3回目、中心暗点が薄くなり、視力の回復を感じる。4回目、月経前。眩しさがあり光が少しきつい。5回目、月経痛がなかった。6回目、本が読みやすい。11回目、視力も8割方回復したので治療は終了。メンテナンスとしての治療に切り替える。40代 男性 会社員 S・KさんPCやスマホの光が眩しくて見ていられないが、光が弱くても見えづらい。そういった見にくさを40代に入ってから徐々に感じていた。そこから次第に視力が低下し始め、物が小さく見え(小視)歪んで見える(変視)。中心暗点が出現。中心性網膜症と診断。レーザー治療もむなしく、その後も視力低下が続いたため紹介を受けて、誠花堂へ来院。週2回の治療で3回目、眩しさが減っている。疲れにくい。小視、変視はそのままだが以前よりはっきり見える。7回目、小視、変視は少しあるが、視力が8割方良い。途中、出張で一か月ほど鍼灸治療を休む間に少し悪化。接待で飲む機会が多いとよくない。44歳 男性 会社員 H・Yさん 2020/071月に痛風と同時に発症。左目に光の残像、歪み、小視があり、全体も緑っぽく見える。暗点、視力低下はない。高脂血症がある。週1回の治療で5回目、歪みが少し減る。9回目、残像がなくなる。歪み、小視、色覚異常がまだ残る。その後、回復は緩やかに進む。23回目、健康診断での数値が改善していた。26回目、目の症状はほとんど消失。眼科にて治癒と判断。38歳 男性 S・Tさん 2020/02右目の中心性網膜症。中心暗点、ゆがみ、色覚異常がある。週2回の治療で8回目。目の調子がいい日が出てきた。13回目、中心暗点が大分小さくなる。その後、週1回に通院を減らしたことで回復が停滞・後退。大方回復したといえるまで34回がかかっていた。週2回通院に戻したところから急速に回復していったことから、多少大変でも治療の間隔は詰めたほうが良いといえる。再発防止へ長期化した症状や再発リスクに対しても、とくに有効な対処法はないといわれていますが、そんなことはありません。その常識の範囲には東洋医学の知見が含まれていないからです。ですから、絶望する必要はないと私は思います。ただし、そのためには以下のような心掛けが必要となります。生活のアドバイス良かれと思って間違った方法を知らずに行っているというケースがよくあります。そうなると回復が遅れますし、再発率も上がるといえます。しかし、なにが合って、なにが合わないのかをご自身で判定することが難しいのが普通です。診察と治療を続けていくなかで皆様の体質がより分かるようになりますので、そこから適切なアドバイスをすることができます。中心性網膜症について中心性網膜症は傾向として30-50代の男性に多く、長期的なストレス、ステロイド使用、睡眠障害、高血圧が、女性の場合は妊娠等も影響するとされています。黄斑部に栄養を送る脈絡膜の血管からにじみでた漿液によって網膜剥離が生じるとされますが、ではどうして浮腫ができるのかという説明にはなりません。気血水という概念で言えば、水の病といえますが、ここもまたそう単純でもありません。つまりは複合的です。自然に治癒するものも多いとされるなか、半年が経過しても自然緩解しない、再発を繰り返すといったケースでは、上記のように別の疾患や問題が存在している場合が考えられます。おもな特徴視力低下中心暗点見える範囲が狭くなったり(視野狭窄)、視野の中に見えない/見えにくい部分(暗点)が生じる状態。色覚異常実際の色と違って見えます。小視黄斑部の網膜剥離により生じます。物が小さく見えます。その他の症状アレルギー性結膜炎、網膜色素変性症、バセドウ眼症、黄斑変性症などの治療経験があります。その他、眼というよりは自己免疫性の病気ですがミクリッツ病の治療経験があります。いずれ追記する予定です。参考『標準眼科学』第13版 医学書院 1998『中心性漿液性脈絡網膜症』戸張幾生 メディカル葵出版 2009『あたらしい眼科38(5)』ストレス時代の中心性漿液性脈絡網膜症 齋藤理幸