あまり知られていませんが、鍼灸師は歴とした医療者です。鍼灸施術は、国家試験に合格した有資格者だけが行うことのできる医療行為です。国家資格の価値は、解剖生理学といった基礎医学を履修した点にあります。つまり医療者として一定の品質を保証したものであるといえます。ですが、それで東洋医学ができるかといえば話は別です。東洋医学を実践するという事は、東洋的なものの見方が身についている必要があります。なぜなら、大切なのは施術者の意識と認識だからです。東洋医学っぽくみせて、実はそうじゃないものが溢れています。誠花堂の説明をするためには、そのことを知って頂くと良いと思い、お話しています。鍼を使ったからと言って、東洋医学になる訳ではない「コリのある所に鍼を刺す」という考えは一般的です。鍼灸師もそう思っていますし、一般の方々もそういうものだと思っています。「シワのある所にブスブスと鍼を刺すのが鍼灸」というのも同様、当然のことのように思われています。鍼を刺せば物理的に細胞に傷がつきます。傷ついた細胞の再生に血液が集まります。たしかに刺したなりに血行もよくなりますが、ただそれだけの話です。コリやシワに針をするというだけのことであれば、医学的な知識はなにもいりません。鍼を使ったからと言って、東洋医学になる訳ではありません。こっているところに鍼をする。しわのある所に鍼をする。そういった、物理的な刺激は鍼灸治療の魅力の一部にすぎません。鍼灸にはそれに留まらない奥深いところがあります。鍼灸には陰陽、虚実、寒熱などを基本として、様々なものの見方があり、そういった見方の上で鍼灸を運用するから東洋医学足りえるといえます。逆にやりようによっては、ステロイドを東洋医学的に使う事だってできるはずです。ですから、大事なのは道具ではなく、施術者の意識と認識なのです。