養生とはこの一言に尽きるのかもしれません。流水は腐ることがありません。開閉する戸は虫に食われることがありません。A rolling stone gathers no mossとはイギリスの格言だそうで、「転がる石に苔むさず」として知られます。共通点は、絶え間なく運動し続けている点にあります。古代中国では、その理想的な状態を”水”というシンボルに託して説かれた教えがあります。『老子』です。Be water-水になれ、はブルース・リーの格言ですが、まさにこれも東洋における理想的な状態を示しています。古代中国に限らず、インドでもギリシャにおいても同様で、古代医学においては人体生命のありようを流体としてとらえ、停滞すれば人は病み、流れが良ければ健康だと考えていた点で共通しています。人間は2000年経ってもそれほど変わるものではないようで、現代にも通用する真理のようです。古くからその事に気づいていた古代人の観点に感嘆させられるものがあります。水は生命を育み、養い、静けさをもたらします。流れている状態が自然で、留まれば濁ります。それは人体における健全さにも関わっています。水たまりのように流れが停滞したところでは、雑菌が繁殖したりして水質が低下します。人体における流れの悪さは気滞、水滞などと表現することできます。その滞りを作らないための教えを「久」の一字で表現することができます。これを「久」字訣といいます。久しくすること勿れ「久」しくずっと同じ状態にあってはいけない。「久」しくずっと同じことをしてはいけない・・・それが久字訣の伝える教えです。良い姿勢であっても、そのままでは疲労が蓄積します。(座りすぎの害)そうすると、流れの悪い状態が作り出されて不調になります。これにはいくつかバリエーションがあります。久行(長時間、歩けば) 筋を損なう久立(長時間、立ち続ければ) 骨を損なう久臥(長時間、横になり続ければ) 氣を損なう久視(長時間、目を使いすぎれば) 血を損なう(女性と東洋医学)久聽(長時間、耳を使いすぎれば) …(血を損なう) 『養性延命録』陶弘景立ち仕事の多い警備員さんは腰を痛めますが、オフィスワーカーや運転手さんなど座り仕事の人たちにも腰痛は多いです。ちょうどいい所がない。寝てばかりの人も気の停滞が強かったりします。妊婦さんは目を使いすぎてはいけません。これも「久」を忘れるべきではありません。