冷え症を例に挙げます。鍼灸をすると例えば、冷え症がよくなることがあります。鍼はホカホカ暖かい訳ではありません。それなのに鍼治療の後、身体が温まることがあるのは不思議な感じがすると思います。それは上手く気が巡ったからと言えます。体を温めるイメージならばむしろお灸の方でしょう。しかし、お灸で目が覚めるような清涼感も出すこともできます。「お灸=温める」という理解は必ずしも正しいとはいえません。なにが言いたいのかというと「身体を温めて〇〇が治る」というのならばホッカイロを貼ったり、コタツに入っていればいいのです。でもコタツで病気が治るなら苦労はありません。いわゆる温活が間違っているのはこの点です。温泉で湯あたりするように、温めて具合が悪くなることも多々もあります。やまいは気から、の真意古代では人のいのちの本質を流体として考えていました。その流れが健全であれば元気に過ごすことができます。なんらかの要因により流れが悪くなると不調が生じると考えます。例えば気の滞りによって手足が冷えるケースがあります。血(けつ)は気の推動作用を受けてめぐります。この場合、気の停滞を解消することが治療となり、上手くいけば体が温まるというわけです。不調があると「気のせい」と言われる場合がありますが、やまいは気の異常のために起こるという意味でいえば、ある意味あたっているといえます。お灸で温まったり、ひんやり感じることがあるのも同様、気に働きかけるからこそ起こるのです。気(はたらき)の異常によるやまいは多い「気のせい」と呼ばれる症状の多くは、いかなる病名であろうと、すべての疾患が鍼灸治療の対象となります。実際、気の異常によるやまいは多いです。実際に診察して問題個所を検索してみると、本当にどこも悪くないという方はほとんどいません。体表に現れたツボに適切な刺激が加わると、必ずなんらかの変化が始まります。参考:『東洋医学』代田文彦・山田光胤 学研