よく、不調の原因をストレスや冷えのせいにしたりしますが、人の不調はいくつもの要因が絡まりあってなるものです。やまいは複合的言い出したらキリがないのですが、不調の原因を考えるときに、例えばこのような要因が考えられます。それぞれが単独で影響するというよりは、複合的に重なり合うことが大きな不調に繋がる考えます。・DNAによる遺伝的な問題・年齢、性別、人種や風土による要素・生活の不摂生・欧米化・その職業に特有の負担や過労・住・労働環境から受ける影響・人工化合物や電磁波、放射能・ウィルスや細菌などによる感染症・気候・気温・自然環境によるもの・怒り、悲しみ、恐れなどの精神的な影響・偏った体の使い方、物事の捉え方の問題・間違った健康法21世紀の日本社会特有の影響があります。運動不足で座りすぎの生活、人工的な生活環境、目を酷使する生活、飽食の一般化などは、これまでの人類が遭遇してこなかった現代特有の問題です。日本の死因として多かった疾患は心血管障害であり、それが脳血管障害、がんへと遷移してきました。ここら辺は技術の進歩も関わる所ですが、やまいとは時代的・社会的な現象であるという事が理解頂けると思います。不調は様々な要件が重なりあって現れます。逆にいえば、なにかひとつの原因で健康が壊れるということはそれほど多くないといえます。例えば事故による外傷や強烈な感染症、PTSDになるようなつらい体験などがあげられます。あまりに強い刺激が加わることで一気に心身を壊してしまうケースです。それとて、罹患する人としない人がいます。なぜなら、ベースとなる体質やほかの条件が異なるからです。この時代・この社会に生きる人々が受ける共通した影響とは別に、個人的な要素があります。やまいは2つとない個性的なもの先天的な病いは別として、多くのやまいはある意味その人自身そのもののと言えなくもない部分があります。酷な言い方になりますが、なるべくしてそうなっている面がある。「やまいとは因縁症である」といわれるのは理由のないことではないのです。それは”関係性”と捉えると分かりやすいかもしれません。人は人との関係という狭い意味ではなく、お金との関わり方、働き方。そしてそれにともなう娯楽や嗜好品との付き合い方もまた健康に関わります。病との関係性もあります。その病いを憎んだり恥と思うのか、肯定的な意味を見いだせるのかはそれぞれですが、その後を左右します。もちろん、食事や運動もそうです。そういった無数にある関係性のなかから病むべくして病んでいる。だからすべてのやまいは2つとない個性的なものなのです。このように見ていくと、やまいはストレスのせいだとか、年のせいだとかいう説明がいかに稚拙で、解像度が低いものであるかが理解できると思います。私たち鍼灸師はこの複雑なる人体生命を陰陽に分け、五行に分けて、病いを分類して理解していきます。古い知恵が活かされているとはいえ、その程度の理解なら数年の修練で身につきます。それでは面白くない。わたしは古典的な鍼灸から学びましたが、そのもう一歩先にいきたいと思っています。やまいの意味時代やその社会の文化によって、健康や病いをどのように捉えるのかにはかなりの違いがあります。生命観、疾病観は世界共通のものではなく、また万古不変のものでもありません。ここではもう説明しきれないので別項に譲りますが、このことは殊の外、大きな意味をもつことがあります。やまいとは複雑で、巧妙で、人知で解き明かしにくいものです。突き詰めていくと、やまいとは人間を知ることでもあるからです。また、時にやまいを得ることで、世界の見え方が良い形へ変わる事さえあります。だから、全人的なケアが求められる現代において、誠花堂は広い視点を持ちつつ考え続けたい。そう思っています。